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一般社団法人日本粉体工業技術協会が行ったアンケート調査※によると、無機材料、医薬品・農薬、食品・飼料など多くの分野で、粉体材料の固結によるトラブルを抱えています。
ここでは、固結した粉体材料をほぐす人的作業に対する課題や工場での人材課題、対策についてご紹介します。
化学や食品、医薬品、電池材料など粉体を取り扱っている業界はさまざまありますが、そのような仕事は、3K(キツイ・汚い・危険)という言葉で表されているほど過酷な仕事であることが知られています。
粉体材料は、圧縮や熱、湿気などによって固結することが多々あり、材料をそういった状態にしないための対策を講じていかなくてはいけません。
その他には、作業現場の環境が良くないと健康被害や事故などに繋がってしまう可能性があります。事故のリスクを防ぐためにも、ほぐし作業における危険性について熟知し、ルールを順守して作業にあたることが重要です。
ほぐし現場作業においては、現在以下のような課題が挙げられています。
経済産業省が2017年12 月に実施したアンケート※によると、94%の企業で人材確保に課題があり、さらに3割強の企業において、ビジネスに影響が出ていると回答しています。
特に、ものづくりの現場での人手不足が深刻な課題となっており、IT、IoT、AI等のデジタルツールや、ロボット・機械などを活用して生産性をアップさせ省人化するなど、生産体制の見直しが求められています。
固結した粉体材料をバットなどでたたく人的作業は、時間がかかるだけでなく、重労働による健康被害や、退職が相次ぐことによる人手不足の問題も指摘されています。問題を解決するには、現場を変えていくことが不可欠です。
粉体材料が固まる現象を「固結」と呼びます。身近なところでは、塩や砂糖、洗剤が固まったり、小麦粉がダマになるなど、経験したことのある人も多いでしょう。
固結にはさまざまな原因があります。例えば、運搬・保管のために保管された材料は、圧縮されて中身が固まることがあります。
また、小麦粉などは元々の性質で凝集性がありますし、保管中に水分が入り込むことによって固結する肥料などもあります。特に化成肥料は、さまざまな化合物からできているため、肥料の水分が何らかの原因によって高くなると、肥料同士が結合して固結してしまいます。
こうして固結した粉体材料をそのまま出荷したり、製造の次工程へ流してしまうと、「原料が固まって釜へ投入しづらい」「撹拌翼に塊が当たり衝撃が大きい」「溶けにくく作業時間がかかる」「ホッパーや配管が詰まってしまう」などさまざまな問題が発生し、クレームの原因になってしまいます。
固結によるトラブル事例
容器に入れた粉が、いつのまにか固まる原因として圧力が考えられます。生活でも粉が固化しているのはよく見られる現象です。たとえば、袋や容器の中に粉を入れていると、一番下の部分の粉が固まっているケースがあります。圧力がかかる状態だと、固化しやすいことが考えられるのです。
圧力が加わると、粒子接触面が大きくなります。他にも、水溶解率を高める、脱水を抑えるなど固結にはさまざまな要因が考えられるのです。容器から粉体が出にくくなるのも圧力や摩擦が関係します。粉の圧力と摩擦で粉が固まり、上部だけ流れていく、流れなくなるケースです。排出口の上部がアーチ状になる、ブリッジという現象も圧力と摩擦が原因として考えられます。
湿気も粉が固化する原因です。容器に入れた塩を使おうとすると、固まったり大きなかたまりができていたりすることがあります。これは湿気による水分の影響で起きる現象です。塩の場合、水分で表面が溶けて乾燥後に結晶ができ、他の塩と影響し合って固まります。
湿度が高いと、液架橋力が発生します。粒子と粒子の接触したときわずかに生じる空間に液体があると発生する力です。逆に湿度が低いと、静電気力が発生します。粉の粒子同士がぶつかると、摩擦や衝突が起き、砕けると発生する力です。
粉体には、凝集性という性質があります。凝集とは一定の振動を粉体に与えると、粉体同士が集まってひとつの大きな粒や玉のようなかたまりになる現象です。
どんな粉体でも、均一に起きる現象ではありません。中には凝集性のない粉体もあるからです。凝集性のある粉体なら、粒ができやすく、ないと粒にはなりません。凝集性が強い粉体は、かき混ぜると複数の粉のかたまりができるため問題です。
熱も固結しやすくなる原因のひとつです。気温や作業中の温度が高まると起きます。袋詰めをしていても温度に影響を受けますし、高温になればなるほど固結度が増す特徴を持っているのです。たとえば、粉体塗料は貯蔵時に貯蔵している場所の温度が高いと、粉体同士が付着し合って塊になります。
固化や凝集の、完全な防止は困難ですが、不可能ではありません。防止や対策が難しくなっている要因として、粉体の種類が多すぎることが挙げられます。ただ、取り扱う粉体の特質を的確に把握し、機器を使う際に工夫をすれば、固化や凝集も予防できるのです。
特にトラブルが起きやすい粉体は、論文や調査結果も出ているため対策が比較的容易です。機器に関しては、詰まりが起きないよう、排出口経を大きくする、ホッパー角度を鋭角にするなどの対策ができます。
固結対策には、大きくわけて2つの対策があります。
1つが、水分が入り込まないよう保管場所に気をつける、保管袋を通気性の良い製品に変えたり、凝固防止のための吸湿剤を粉体に混ぜるなど、「そもそも固結しないようにする」対策です。
もう1つが、固結したものをほぐす対策です。固結した粉体材料をバットなどでたたいてほぐしたり、粗砕機を使うなど、現場によってさまざまな方法が取られています。
粗砕機は、塊を粗めの形に砕く機械のことです。固結した原料を袋のままほぐす機械と、材料を袋から取り出して砕く機械があり、どのくらいの大きさにほぐす(砕く)かによって、さまざまな機構の機械が製造されています。
粗砕機を使えば、バットやハンマーで袋を叩いたり、床に叩きつけたりすることなく、スピーディーに均一に材料をほぐすことが可能です。人的作業を大幅に削減することで、生産効率が格段にアップ。
材料や袋を傷つけたり壊す心配がないなど、ロスコスト削減にも貢献してくれます。
固結した粉体を袋から出して粉砕する場合、異物混入のリスクは高くなります。ほぐし作業周辺の環境や粉砕方法などによって粉体に異物が混入し、後に大きなトラブルとなるケースも。製品回収や健康被害を生じることもあります。
そのため、ほぐし作業における異物混入のリスクを理解し、適切な対策を講じることが大切です。以下に、異物混入で起こり得るクレームを紹介します。
異物を除去するための設備において、検出不足によって異物を除去しきれないケースがあります。粉体に混入する可能性がある異物の種類はさまざまですから、現場で混入するリスクのある異物の形状や特性に合った設備機器を導入する必要があります。
たとえばほぐし作業現場の清掃・整頓ができていないと、思わぬ異物混入を招く可能性があります。清掃や整頓ができていない作業環境には、塵や埃、砂、ゴミなどのほか、ウエスや糸くず、ガムテープの破片、紐やゴム破片などさまざまな異物が存在しています。そのような環境でほぐし作業を行えば、異物混入のリスク上昇は避けられません。
粉体をふるい分けする装置では、性能によって確実なふるい分けができていないケースもあります。粒子の大きさを揃えたり大きさごとに分ける工程でふるい分けができていないと、生産プロセスに影響が出てしまいます。 また、本来は異物除去の目的で行っているふるい分けで異物が混入してしまったケースもあります。このケースでは、ふるい装置に使用しているナイロン網やステンレス網が破れてしまい、原材料の中に混入してしまったようです。
作業員の操作ミスによって異物混入が発生するリスクもあります。操作ミスを起こさないようトレーニングすることはもちろん、操作ミスを防ぐ環境づくりも大切です。操作ミスによって爆発事故が発生した可能性もありますので、十分な対策を講じなければなりません。
異物混入を防ぐためには、作業環境の整備や適切な機器設備の選定が重要です。また、作業を行う人員の教育も欠かせません。異物混入を起こしてしまうと企業の信頼を損ねてしまう可能性もありますので、十分な対策を講じましょう。
異物混入を防ぐために、まずは混入リスクのある異物を把握しましょう。そして、混入リスクのある異物に対応した防止策をとります。さらに、異物が混入しにくい作業環境を整えることも大切です。清掃や整頓を徹底し、異物混入リスクの高い道具の使用は避けましょう。
また、そもそも異物混入を起こしにくい「袋から出さずに粉砕を行う粗砕機」の活用もおすすめ。袋を破かずに粉砕を行えるため異物混入のリスクを低減させるのはもちろん、作業の効率化も図れます。
粉体を取り扱う現場作業では、粉体の投入、混合、袋詰めの作業を行うときに、さまざまなリスクを伴います。物質によっては必要以上に保管していると出火・延焼していくリスク、粉塵爆発を起こすリスクが増加えてしまうようです。
また、狭い作業場で取り扱っているケースでは、適切に換気をしないと気分が悪くなるなど、体へさまざまな悪影響を及ぼしてしまう可能性もあります。取り扱う物質が有害なものであることを理解しないまま作業手順を守らずに業務にあたると、事故や健康障害を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
このような危険を回避するためには、環境や設備を整えたり、ラベル表示の徹底をしたりするなど工夫することが大切です。
新人職員や配置転換の時期には、安全衛生教育を行ったり、過去の事故事例やヒヤリハット事例について共有したりするなど工夫していくことで事故防止に繋がります。
粉体のほぐし作業現場では作業員の心身に大きな負担がかかっています。固化した粉体をほぐすために棒で叩いたり削岩機を使っている事例もあり、ケガや事故発生リスクが非常に高くなっています。
そのため、ほぐし作業における機械化が作業環境改善のための重要なポイント。なかでも袋を破かずにほぐせる粗砕機なら、作業員の安全を確保しながら効率よくほぐし作業を行えます。
ほぐし作業現場では健康被害への対策も十分に講じておかなければなりません。たとえばほぐし作業では、土石や岩石、鉱物などの粉塵を扱うこともあります。粉塵を長期にわたって吸い込むと肺に溜まり、息切れや動悸、じん肺などの健康被害が生じる恐れも。
そのため、作業環境を整備し防具を装着するなどの適切な対応が求められます。
粉体材料をほぐすために、バットやハンマーなどで叩いたり、床にたたきつけるなど人的作業を行っている現場が少なくありません。
こうした作業は重労働のため、作業員の健康被害や人手不足などさまざまな問題が発生しています。
粗砕機を使えば、スピーディーに安全に粉体材料をほぐすことができ、生産効率の向上が期待できます。ほぐし現場の環境改善をお考えの方は、ぜひ粗砕機の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
※選定条件:「粗砕機」を取り扱うGoogle検索上位26社の中で、現在袋体のまま粗砕する機械は3種類だけになりますので、3種類の機械をご紹介します。(2021年8月3日時点)
(※1)2021年9月時点 参照元:平野整機工業株式会社 公式HP「新着情報」http://www.hiranoseiki.co.jp/news/?p=2